2008年11月16日

マノロ・ブラニクと角田光代「さがしもの」

うちのダンさんが、ずいぶん前につぶやいた言葉。
「私のあと残りの人生には、煙草と本があればいい」
あの人が持ち運ぶものは、その二つだけ。
それでどこにだって行けるだろうと。。。

親友にこのことを話すと、「みんとちゃんはそれでいいわけ?」と
心配をしてくれたりしていましたが、
私はその言葉を聞きながら、なんだかあの人らしいなあ。。。と
何故か笑ってしまっていました。
余計なものをそぎ落として、たくさんの欲望を捨て
ただ穏やかにいろんな戦いから離れてこうやって生きていくこと。

私はそうやってこの人が大好きな野球の近くに
いられるように、そばで見守っていけることが
私の残りの幸せかもしれない。
そして、こうやって私も本を読む。
映画を観る。
スポーツに感動する。
そして子供の幸せを願い、母とお茶を飲む。
友と笑い語らう。


角田光代さんの「さがしもの」を読了。
L4101058245.jpg
角田さんは女流作家でも3本の指にはいるくらい好きな作家さんです。
この方もうちのダンさん同様、何も食べなくたって
本を読んでいれば幸せな人なんだなあと思う人。
以前、インタビューでネパールでつい手にした本を読んだ後に
古本屋で売ったあと、数年後、中東のある国の路上で見つけたという
話をしてらしたことがあるのですが、そのことを元に9つの小品集を
書かれていました。
旅する本。。。
なんてステキな言葉なのでしょう。

私がこの中で好きな短編は、「彼と私の本棚」
本がきっかけで付き合い一緒に暮すことになった二人が
別れることになる。
そして荷物をまとめて二人が暮らした部屋から彼女がでるときに
二人が読んだ本を片付けていく話。
これがとてもおもはゆく、せつない。
彼が他に好きな人ができたので、もう一緒に暮せないというと
彼女が・・・
「その人、本を読むの?」と口にするところ。
じんわり心にしみて、最後で一気に泣けました。
”びょおびょお”と泣く。
こんな感じ。
恋と本、そして喪失感の大きさが、本棚が示しているところ。
角田さんの等身大の言葉が心を揺らしていきます。

そして、ポール・ギャリコの「雪のひとひら」
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女の一生が、冬のある日に空から舞い降りた雪のひとひらの
一生となぞらえて、実にピュアに繊細に描かれていく物語です。
女が生まれ、恋をし、結婚をし、子育てをし、年をとり、老いて
死んでいく。。。。
私が泣けたのも、夫の雨のしずくとの別れのシーン。

いかなる理由あって、この身は生まれ、地上に送られ、よろこび
かつ哀しみ、ある時は幸いを、ある時は憂いを味わったりしたのか

女の人生がひとひらの雪に重なります。
美しい珠玉の言葉が翻訳の矢川澄子のことのはで表現されます。
心が打ち震えるほど美しくはかなげで素晴らしい言葉の数々。
素晴らしい翻訳をされる矢川さんです。
ラスト、あたたかく柔らかな気持ちに救われます。
装丁の絵もステキです。ぴかぴか(新しい)

ずっと気に入って履いていたマノロの靴がコンクリートに
ひっかかってやられてしまいました。
甲のところがパラリと開いてしまい、何度かリペアに出したのに
やっぱりお釈迦に。。。(涙)
今夏のお話です。
なのにうちのダンさんが覚えてくれていて、先日、外商さんに
頼んで買っておいてくださったそう。。。
2008111433.JPG
カットのラインが前のと変化し、色も黒だったのですが
今回は濃紺です。若干素材が違うところもありますが、
間違いなくこのデザインです。覚えてくれてたのね。。。
というか、どのようにあの人が頼んだのでしょう?(笑)
>それは聞かないでおきましょう。かわいい
バックストラップがずれてくるので、滑り止めを補強して
もらいにデパートに伺ってまいりました。

大事に大事に履かせていただきます。
背筋を伸ばして、頑張ります。
本当にありがとう。
posted by mint2 at 23:41| 兵庫 ☁| Comment(9) | TrackBack(0) | BOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月05日

「チャイルド44」と「祇園おかだ」の鯖棒寿司♪

少しいつもの鼻炎をひきずった連休。
中々、パソコンも触れず、お友達のブログも拝見できず
ちょっとストレスもためながら、有馬に行っても、おでかけ
しても、ついついこの本の誘惑にひきずりこまれてしまい
ました。。。
>皆さん、遊びに伺えずごめんなさいね〜。あせあせ(飛び散る汗)

トム・ロブ・スミスのデビュー作
『チャイルド44』上下巻

チャイルド44.jpg
チャイルド44下.jpg

めちゃ、おもしろいっす!!
>おかわりくん風(^^)

単純なミステリーもしくは謎解きと思ってしまいがちですが
これがしっかり裏切ってくれるのです。
謎を解決するというより、完璧に・・・
読み応えたっぷり気持ちいい
クオリティの高い冒険小説です!!


前半のスパイ追撃のシーンもそうだし、
左遷されてからもそうなのですが、
主人公がぎりぎりのところまで追い詰められていきます。
収容所への護送列車から脱走までしてしまいます。
自分の罪への贖罪というだけではない何ものかにつき動かされて
そして悲しくこっけいなほどに、追い詰められていくのです。
この辺が、近年の冒険小説にないほどの切迫感でリアリティが
たっぷりでした。

うーむ、新進気鋭のすごい脚本家あらわる!!
いかに映像的に丹念に描写し、プロットを計算して読み手を
強引に納得させる巧いワザの連発。
旧ソヴィエトの寒さ、怖さ、過酷さ、不気味さ、
密告社会の恐怖感、緊張感。
そして、なぜこんなに子供達が無残にも殺されてしまうのか。
家族の絆とは、血とは、そして人間の尊厳とは。。
最後に愕然となります。

翻訳者、田口さんの職人的な手管を感じる文章力が大きいの
でしょうか。翻弄されまくりましたわ。。。ワタクシ(^^;;
高校時代にこの本を読んでしまったら、おそらく心の体力的に
しばらく立ち直れないかも。。
というまで打ちのめされてしまいました。

ジュンク堂書店の新潮文庫に普通に平積み。。。
コピーも何もつけられず扱いが小さすぎるのですが
本当にこんなにおもしろいのに、どうして???なんて
思ってしまいましたよ。(^^;;

映画はリドリー・スコット監督で撮影されるとか。。。
ハリウッドのステレオタイプの俳優ではなくロシアの
冷たく悲しいスパイを感じさせる俳優さんでお願いしたいところ
なのでした。

久々に大好きな「祇園おかだ」さんの
鯖の棒寿司をさなえ先生のご紹介でおくっていただきました〜。
おかださん、さなえ先生、いつもありがとうございます〜。
京都がきゅーんと寒くなるこれからは、鯖街道からあぶらの
たっぷりのったてっぷりと身の厚い鯖をいただくのが季節の
楽しみなのですね〜。
夏の鱧寿司につづいてのちょっとした贅沢です(^^)
NEC_0559.JPG
↓大きな身です。たっぷり12切れもあるのでお腹いっぱいに
なっちゃいます。
NEC_0561.JPG
鯖と寿司飯の間の山椒がきいてて、上品で美味しいのです。
まったりいただきたいのだけど、やっぱりお酒がほしくなるお味。
ほおばると口の中でこの〆た鯖がトロリと同化する感じです。
>なんのこっちゃ。
母は、焼き海苔をまいていただいてました。
こうするとまた味わいが変わって楽しめました♪わーい(嬉しい顔)
posted by mint2 at 23:51| 兵庫 | Comment(6) | TrackBack(0) | BOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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