どれもとってもステキでした。
とっても心に心地よい風を送ってくれた作品
「once ダブリンの街角で」

ダブリンの街角で実家のHooberShop(掃除機の修理屋さん)を
手伝いながら、穴のあいたギターを片手に歌を歌う男と
チェコから移りすみ家政婦や花売りをする女が運命に導かれ
出会います。
たった一度onceの出会い。
その出会いが二人の人生に彩りを与えそして生き方を
変えていきます。
それは音楽の力で・・・。
サンダンス映画祭のグランプリ、オスカーの音楽賞も
とった二人の歌がカットもされず全編を通して流れるこの
素晴らしさ。1800万円ほどの低予算で作られた奇跡の映画に
拍手でした。
ハリウッドの映画ならこんな終わり方しないだろうなあという
胸がキュンとなりつつも、さわやかな風を心に残してくれた
ラストシーン。
エンドタイトルに二人の主人公の名前はなくただBOYとGIRL
あぁ、そういえば二人が名前を語り合うシーンも紹介する
シーンもなかったのでした。
でも、そんなことどうでもいいのです。
その音楽は時に心地よくて、時に痛くて、時に切なくて、苦しくて。
入りそうで入り込めない二人の間だけで、音楽を通っていく。
だって二人は音楽を通してつながっているってわかってたから。

歌詞の中に二人のバックボーンや、心情がしっかりと
暗示されていてそしておしつけがましくない。
ヒロインが歌詞をつけて歩きながら歌う「 If You Want Me」という曲では私も泣きそうになってしまいました。
彼女が、初めてのバイクデートで話したチェコ語の意味が
知りたい。彼女はなんて思いを言ったのでしょうか?
彼女が、英語もロクに話せないチェコ人の母を連れていくことを
さりげなく聞いたのに、どうして彼は言葉を濁したのでしょうか?
そんな膨らませるラブストーリーの展開はあったはずで
観る側に素朴な疑問や期待を投げかけてくるのに
こういうことはあっさり却下されるようにたんたんと二人の
間に時間が流れ、切ないラストに流れ込みます。
ハンディカメラ2台程度とおそらくお金をかけたのは
クレーン撮影で俯瞰で彼女の表情を遠目から撮影する
シーンだけなんだろうなあと予想される技術と演出ですが、
これだけでこんなに心を打つ映画が作れるのは、やっぱり
アイルランドという国が持つ大自然や祖先へ尊敬の気持ち、
ケルトの思想を持つ深い祈りにもにた意思でしょうか。

この映画をブロードウェイが舞台化するということで版権を
とったようですが、このケルトの愛の意思とチェコの深い祈りが
きちんと表現された舞台になってほしいものです。
主題歌の「Falling Slowly」
本当に素晴らしくて、映画なのに二人の歌が翼をひろげて旅立つ瞬間に
立ち会えた喜びに震えました。ステキな映画です。

二人のハーモニーが聞きたくて、You-tubeで探してしまいます。
