ような感覚や、鼻につく演技のうまさで苦手な人も多いんじゃないかと
思うのですが、名作「花とアリス」「フラガール」の役のように観客を
「蒼井優@疑似体験」モードにしてしまう世界観があります。
スクリーンの蒼井優を見ていると、いつのまにか蒼井優みたいなため息を
ついていたり、あの長い手をブラブラと前にしてペタペタと歩いてしまって
いるような感覚。
日本にこういういろんなカテゴリーにとらわれない女優さんが
いるというのは素晴らしいことです。
蒼井優でなければ、できない映画がそこにありました。
監督・脚本のタナダユキさんは、この華やかな芸能界にいてどこか
はかなげでそして所在なげで、授賞式でもぼーっとしている蒼井優に
主人公の「鈴子」を託したのはそういう思いだったんではないでしょうかね。
映画「百万円と苦虫女」を観てまいりました。

映画は、全然「癒し」「ほっこり」「スロー」「ゆるーい」みたいなのを
期待していたら、全く違います。
ある理由があって前科者(?)になってしまった鈴子の「without myself」
ロードムービーです。
鈴子は、ちゃんと仕事もできるし、言われたこともきちんとできる女の子
なのに、イマイチ「家族」という最小単体のコミュニティにもなじめない。
だから、おそらく「学校」「会社」「地域」そういうものにも上手に世渡り
というものをもたない。
適度な距離で人と関わっていれば、自分も傷つくこともないし、相手を
傷つけることもないということはしっかり理解している21歳。
「百万円たまったら、次の街へいく」と決めて、海の町、山の村、東京から
少し離れた地方都市と流れていく。
自分とどことなく似た「いじめられっこ」の弟。
めんどくさい弟だったけど、彼女は弟を心のよりどころに旅を続ける。
出会う人は、自分勝手な人もいれば、心温かい人もいる。
取り残された弟は悪質で下劣なイジメに必死に耐えている現実がある。
彼女は自分のことをまったく知らない人達の中でするりと漂々と生きる。
そして、彼女を知りたいと思い、彼女がするりとその町や村から
去った「心の種」を残していったことを淋しく思ったりする。
そして、彼女は「ヤバイ。乙女だー」と恋もする。
恋をする森山未来くん演じる中島くんもいい。
>多分、タナダさんは森山くんがすっごく好きなんじゃないかなー。
カメラワーク、優しいセリフ、とんがったセリフ、切ない気持ちを
封じ込めたところなど、森山愛が炸裂していたように見えちゃったわ♪(笑)

現実から逃げて、自分勝手に生きているように見える姉を軽蔑していた
弟がそっと姉の鈴子のジャケットを握って、それから手を包む。
中島くんへの思いが通じて、二人が荷物を持ち替えてゆっくりとまさぐる
ように手をつなぐ鈴子。
「つないだ手」をカメラがクローズアップする。
このことを、タナダさんは自己投影している鈴子ちゃんに伝えた
かったことじゃないかな。
いろんなことから、逃げても、自分の思いやりで人を傷つけたくないと
思っても、やっぱり人間はこの「つないだ手」が必要で、それが「現実」と
向き合うただ一つの方法だということ。
中島くんのアパートで、切ったネギの根っこを鉢に植えていた中島くんの
素朴な表情に和み、心から笑顔をだして鈴子ちゃんと中島くんの
キスシーンが、とってもかわいくてステキなシーンでした。
(タナダさんは、とても丁寧に二人のことを撮っているなあと思いました)
ラストは賛否両論いろいろあるようですが、
私は、次の町で鈴子ちゃんが中島くんの思いをちゃんとわかるように
成長しているんじゃないかな。と思いました。
この恋は、アンハッピーなんかじゃないですよ。
うん、ぜったい!

★映画のツボ〜ちょっとネタばれ〜
・桃農家のピエール瀧さん、いやらしさ満点の刑事、田口トモロヲさん
実にいい味です。
ところどころ、素晴らしい役者さんが随所に♪
・鈴子ちゃんが「前科者」になるきっかけをつくった「バカップル」
見つけたら思いきりぶん殴ってやりたいわ!!と私一人で怒っておりました。
・弟を陰湿にいじめるアホ小学生
おばちゃん、見つけたらただじゃおかへん!と私一人で怒っておりました。
・森山未来@愛が炸裂しそうになるくらい、かわいかったー。
自転車をぐんぐん漕ぐシーンは、セカチューでしたね。骨太で指のきれいな
いい男に育っているわ〜と私一人で萌えておりました。
・自分のことを知らない町で暮らしてみたい。
誰しも、そんな鈴子ちゃんのように思うことがあると思います。
だから、インターネットもブログもこんなに普及したのかもしれませんよね。
私のことを知らない人が私のこのブログを目にとめていただき、
いろんな感じ方をしてくださることが、なんだかとっても不思議で居心地がよかったりするんですよ。

今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。(^^)